端っこの空

ゆるーくゆるく

セックスと後悔

また、やってしまった。
午前10時、自分のシングルベッドの隣ですやすやと寝息を立てる2個下の後輩を見ながら、ゆりはそんな言葉を頭に浮かべた。

昨日は大学のゼミの飲み会で、調子に乗って沢山飲み過ぎて、その後の二次会で2個下の後輩のサトシくんに心配されて「家まで送りましょうか?」と聞かれた。聞かれた瞬間頭の中でこの男と万一関係を持つとしたらアリかナシかを考え、それなりな顔と身長と、重くなさそうな性格のサトシくんならアリかなという答えが出たのでゆりはMAJOLICA MAJORCAのピンクのチークがふんわりと乗った頬をあげて微笑んだ。
そして案の定サトシくんはゆりの家に泊まり、2人は関係を持った。

ゆりはセックスをするのが割と好きだ。行為の最中は相手は自分のことを可愛いと言ってくれるし、それなりに気持ちのいい思いも出来たりする。まあサトシくんはそんなに上手くなかったけど。ゆりは隣で眠るサトシくんの頭を撫でながら心の中で正直な感想を述べる。
ゆりには彼氏がいるが、大きな喧嘩をしてからセックスもキスもしたくなくなった。遠距離恋愛なので、毎日会わなくていいということだけが今はメリットに感じられる。彼氏とはしたくないが、それでもぎゅっとハグしたりキスしたり、そういうことをしたくなるときはたまにある。それが昨日の夜であり、だからゆりはその飲み会の一次会で隣に座って初めて名前を知ったサトシくんと関係を持った。別に彼のことが好きなわけでは無くて、ただ顔と性格がナシでは無かったから。
サトシくんには喧嘩中の彼女がいるらしく、バレたらヤバいねと昨日行為が終わってから笑って言っていた。それ、笑い事じゃなくない?内心そう思ったが、まともな返事をするのも面倒で、そうだねと微笑んでおいた。

朝起きて、ゆりはそんな昨晩の出来事全てを後悔した。
好きでもない男と関係を持つのはもう5回目で、その度に「好きだよ」と嘘の吐く。彼氏にはもう好きだよなんて随分言っていないのに。
サトシくんには彼女がいるからバレたら本当に面倒なことになるし、どうでもいい男にこんなに簡単に体を許してしまう自分の情けなさに辟易もする。何より嫌なのは、サトシくんが昨日の行為中に言っていた「セックスすると相手のこと好きになっちゃうんだよね」という言葉だった。
ごめん、私はこういうことしても好きにはならないよ。
そんな言葉はこころで留め、昨日は「そうなんだ」と適当に相槌を打った。

ゆりは好きでもない男とセックス出来てしまう。だから適当な相手に体を許して、その度に後悔をする。
なんだか体だけではなくて、大事な何かも一緒に安売りしてしまっているような気がするから。

隣で眠っていたサトシくんが目を覚まして、ゆりのことをぎゅっと抱きしめながら寝ぼけた声で聞いてくる。
「俺のこと、すき?」
ゆりは抱きしめ返して笑顔で答えを誤魔化す。